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不動産売買契約書に記載する契約不適合責任の定めとは
(旧:瑕疵担保責任)

記事監修:司法書士・行政書士 吉田隼哉

瑕疵担保責任の定めとは

契約不適合責任の定め

 不動産の瑕疵とは、簡単に言えば欠陥のことです。
家を買おうとする人は、内覧等で物件の状況を確認でき、当該物件を気に入れば購入する流れになります。しかし、購入前に見落としていた物件の瑕疵については原則として売主に対して請求をすることができ、請求を受けた売主は修理や補修等を行う義務があります。

この責任のことを従来は瑕疵担保責任と呼んでいましたが、2020年4月1日から「契約不適合責任」に変わりました。

この契約不適合責任の追及については民法の条文が根拠となりますので、まずは条文からご確認ください。

契約不適合責任の条文(民法)

 以下の条文をご確認ください。

民法第562条

1.引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。

2.前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。

条文を見るとよく理解ができないかもしれませんが、噛み砕いて解説をすると、契約に適合しないものがあれば、買主は売主に対して、「追完請求」「代金減額請求」「催告解除」「無催告解除」「損害賠償請求」の5つができると書かれています。

改正前の瑕疵担保責任の場合には、買主の請求できる権利は、契約解除・損害賠償請求の2つにとどまっていましたが、改正によって請求する権利が増えたことになります。

どの程度、不動産取引上の実務に影響をしてくるのかわからないところではありますが、改正によって買主側の保護を強くして売主の責任を重くしたものと考えられます。

不動産という高価な対象物を売買する以上は、買主の立場を守る方向になっていくのは当然なのかもしれません。

契約不適合責任の免責規定

 中古住宅の場合に利用されることが想定されるのは「契約不適合責任の免責」規定です。この規定を売買契約書に盛り込むことで、売主としては引渡し以後の責任を負わないことができます。
瑕疵担保責任の時代にも免責規定はよく利用されておりましたが、契約不適合責任に改正された現在においても免責(または一部免責)にすることは有効であるとされていますので、売主と買主の双方が納得すれば、契約不適合責任の免責規定を利用するといいでしょう。

 ここで、売買契約書に記載される契約不適合責任の免責規定の文例を見てみましょう。

契約不適合責任の免責規定の文例

第〇〇条(契約不適合責任)
売主は買主に対し、本契約にかかる一切の契約不適合責任を負わないものとし、買主は売主に対し、本件目的物が契約に不適合であることを理由として売買代金の減額、追完、解除又は損害賠償請求をすることができない。

 このような文言が売買契約書に盛り込まれれば、売主は契約不適合責任を負いません。
買主が個人の場合には、ある程度の期間を定めて契約不適合責任の定めを記載するのが通例ですが、買主が不動産会社のような業者であれば免責にすることが多くあります(不動産業者としてはプロであるから契約に適合しないリスクを承知のうえで購入する)。ただし、契約不適合責任を免責にすることで買主側にリスクが増加することになりますので、通常の売買価格よりも下がる傾向にあるようです。

親族間売買と契約不適合責任

 本サイトをご覧いただく方の中に、親族間売買を検討されている人も多いと思いますので、親族同士の売買のケースで契約不適合責任をどのようにするか触れておきます。

親族間売買で最も多いのは、親子間売買です。そして、売買対象となる不動産は「親名義の家」であることが多いのですが、ほとんどの場合では買主である子供がその家のことをよく知って(もしくは既に住んでいる)いますし、親族同士という関係性から、あえて契約不適合の責任をつける必要性がないので、当センターで親族間売買を行うお客様の大半が「契約不適合責任の免責」を選びます。

この傾向は、親子間に限られず、叔父と甥の売買・兄弟間売買・義理の親との売買・叔母と姪の売買など、他の親族間売買でも同様に免責を選ばれます。(当センターから契約不適合責任の説明をしたうえで「責任規定はどうしますか?」と聞いてお客様は免責を選びます)

他人同士の売買では、ありえないことなのですが、親族間売買ならではのことなのかもしれません。これは、売主買主間に既に信頼関係が形成されていて、「何かあっても自己の責任で解決する。」「相手の方には迷惑をかけない。」といった意思が働いているからかもしれません。

個人間売買での契約トラブル

 不動産売買において、契約上のトラブルは絶対に避けなければいけません。
不動産会社をの仲介をいれたとしても契約トラブルの確率を0にすることはできませんから、なるべく安全に取引を行えるよう細心の注意を払うしかありません。
特に、不動産仲介をいれないような個人間売買なら尚更です。自己責任といわれたらそうなのかもしれませんが、契約不適合にならないようにお互いがしっかりと話を詰めて、契約不適合責任等の売買契約の内容を理解したうえで契約締結を行うべきです。

当センターは、今のところトラブルが発生したり、問題が起きた話は聞いたことはありませんが、抑えるべきところは抑えて、しっかりと売買を行うようにしてください。

 なお、「個人間売買」のことをもっと詳しく知りたい方のために、不動産の個人間売買・親族間売買に関する当センター事例集・情報・基本知識から応用知識、参考資料や見本など、当サイトのありとあらゆる情報を詰め込んだ総まとめのページがありますので、下記をクリックしてそのページへとお進みください。

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個人間売買と親族間売買のお役立ち情報

大手不動産会社で勤務後、不動産系3大国家資格である宅地建物取引士・管理業務主任者・マンション管理士を取得。司法書士・行政書士法人よしだ法務事務所を開業し、相続・遺言・個人間売買の三本柱で業務展開。ご依頼者に対しての総合的なサポートを目指す。

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個人間・親族間売買の知識まとめBOX

1.不動産の仲介手数料はどれくらい?
2.土地売却に伴い発生する境界確定とは
3.売買登記の登録免許税を計算方法は
4.売買登記の登録免許税の減税
5.住宅用家屋証明書とは
6.重要事項説明書について
7.近隣トラブルと不動産売却
8.マンションの個人間売買の注意点  
9.戸建ての個人間売買の注意点
10.相続で取得した不動産を売買する
11.個人間売買で必要となる抵当権抹消
12.売買の前提となる住所変更登記
13.固定資産税、都市計画税について
14.不動産の評価額がわかる評価証明書とは
15.公課証明書とは
16.公衆用道路の登記の漏れをなくす方法
17.所有者の氏名が変わっている場合の売買
18.売買による所有権移転登記の必要書類
19.タワーマンションと固定資産税
20.区分建物とは 
21.セットバックとは
22.親族間売買とみなし贈与
23.個人間売買と譲渡所得税
24.個人間売買と不動産取得税
25.借地上の建物の売買
26.底地の個人間売買
27.不動産契約書に貼付する印紙とは
28.売りにくい不動産とは
29.事故物件とは
30.瑕疵担保責任の定めとは
31.共有持分だけで売却できるか
32.共有名義の一人が認知症になったら
33.農地の個人間売買 
34.個人間売買の司法書士の関与 
35.建ぺい率とは
36.容積率とは 
37.未登記建物を売買できるのか
38.登記簿上と床面積が違う場合の売買
39.認知症の親の不動産を買い取る
40.建築確認を得ていない違法建築物の売買
41.区分所有者の変更届
42.公示価格とは 
43.路線価とは
44.譲渡所得税の取得費と、その証明 
45.住宅取得等資金の贈与税非課税枠とは
46.地価の上昇地域と下落地域
47.不動産売買契約書に実印を押す意味
48.既存不適格物件の売買の注意点 
49.個人間売買・親族間売買と不動産会社
50.個人間売買・親族間売買と司法書士
51.個人間売買・親族間売買と行政書士
52.個人間売買・親族間売買と不動産鑑定士 
53.個人間売買・親族間売買と土地家屋調査士
54.個人間売買・親族間売買と税理士 
55.個人間売買・親族間売買の依頼について
56.不動産売買契約に必要なもの
57.遠方不動産を個人間売買
58.親子間売買まとめ
59.兄弟間売買まとめ
60.中古マンションの価値と個人間売買
61.個人間売買は更地がいいか
62.建物滅失登記とは
63.一般的な不動産売却の流れと期間
64.登記済権利証と登記識別情報の違い
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69.空き家の放置で固定資産税が6倍に?!
70.危険負担とは/売買の前後の建物崩壊
71.売買で所有権移転登記をする意味
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75.親族間での売買と贈与の比較
76.親族間売買と銀行融資(住宅ローン)
77.残金決済とは
78.個人間売買での価格の決め方について
79.親族間売買での価格の決め方について
80.不動産の登記簿謄本の取得方法
81.不動産の登記簿謄本の読み方
82.親族間売買と3000万円の特例
83.認知症の親と親子間売買は可能か
84.法人と代表取締役との不動産売買
85.権利証を紛失した場合の個人間売買
86.割賦契約の方法とは①
87.割賦契約が親族間売買に向いている理由②
88.割賦契約を利用する場合の4つの注意点③
89.大家と借主間での個人間売買の方法
90.管理費を滞納したマンションの個人間売買
91.売買契約時に行う手付金の取り決め方
92.土地の一部の売買を個人間で行う場合
93.公簿売買とは 
94.個人間売買の固定資産税、都市計画税の日割り清算 
95.不動産会社との3つの媒介契約 
96.媒介契約中に自分で売却先を見つける 
97.再建築不可物件とは
98.地主から借地を購入する
99.遺言に記載した不動産を子供に売却することはできるのか
100.第三者を介さず個人間で不動産を売買する
101.抵当権の抹消をし忘れた不動産の売買 
102.当事者が遠方の場合の個人間売買 
103.個人間売買の事前準備
104.個人から法人への不動産名義変更の方法
105.共有持分についての親族間売買
106.親子間売買を使った相続税対策
107.自分で親族間売買をする方法
108.親族間売買の3つの方法とは
109.共有状態・権利関係を整える方法として親族間売買
110.ホームインスペクションとは
111.ホームインスペクションの作業風景
112.親族間売買と住宅ローンまとめ
113.売主が引越しまでにやるべきこと
114.収益物件を分割払いで購入し家賃で支払う
115.親族間売買で分割払いの条件の決め方
116.分割払い期間はどれくらいにすべきか
117.分割払いの内容を途中で変更できる?
118.分割払いではいつ所有権移転できる?
119.売買代金を分割払いにしたら税金は?
120.親族間売買で分割払いにする方の特徴
121.売主へ分割払いを提案する方法
122.分割払いに金利を設定すべきか
123.親族間売買と分割払いは相性がいい理由

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当センターの個人間売買の解決事例集

1.子供が所有する投資用マンションを親が購入
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80.姉から土地持分を買い取る親族間売買
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82.妻の親から家を購入したい
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94.遠方の叔母と親族間売買をした事例
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